数学の基礎はチャートから

チャート式で基礎レベルから、受験勉強を始めよう。
どの本屋に行っても平積みされているチャート式。
受験生なら誰もが知っている、数学の基礎固めとして定番の問題集だ。
ここでは、効果的なチャート式の使い方を紹介する。

受験勉強の一冊目でチャート式を解く意味

チャート式の特徴は、なんといってもその分厚さと、それがゆえの出題範囲の広さ。
出題範囲が広いということは、それだけ多くのパターンの問題がある。
チャート式に収録されている例題は、どれも「受験生なら解けて当然」の問題ばかりなので、つまりチャート式の例題は、受験数学の基礎となる型を作ってくれる。

チャート式では、受験数学の必要最低限の基礎の型を身につけるのが目標となる。(網羅系の参考書は、どれも似たような目標だけど)
これが土台となり、その上に数学力を積み重ねていくことになるので、ここはしっかり腰を据えて取り組んでもらいたい。

何色のチャート式を使うか

偏差値にもよるけど黄チャートを勧める。
チャート式問題集は全部で四種類が存在して、難易度ごとに色分けされている。
難しい方から順に並べて、赤>青>黄>白である。
では、東大に行くには赤チャートをやらねばならないか、というとそうでもない。
結局、一番万人向けなのが

チャート式 解法と演習数学1 改訂版

チャート式 解法と演習数学1 改訂版

黄チャート」なんじゃないかと思う。

新課程はこっち

新課程チャート式解法と演習数学1+A

新課程チャート式解法と演習数学1+A

何故黄チャートが万人向けかというと、「入試の準備の基礎固め」というチャート式で達成すべき目標に一番合致しているから。
赤チャートをやるくらいなら、別の入試用問題集をやればいいし、入試の基礎固めが目的のチャート式でここまで難しいものをやる必然性が見あたらない。
青チャートは、いくらか簡単にはなっているものの、学校の教科書しかやっていないような段階で独学でやるには少々荷が重い。(事実、青チャートは現役当時挫折した経験がある)
上記二つは、入試の土台形成という意味では、高級過ぎるように思う。別に、すらすら赤や青が解けるのであれば、それで構わない。
そうではない人は、せっかくのスタートで躓いては今後の勉強にも支障をきたすので、ここは無難に黄チャートあたりで抑えておくのがいいだろう。
逆に白チャートは、そこまで到達点が高くなくてもいい、という人にはいいが、土台形成をするためには力不足の感がある。よって、問題の難易度、解説の丁寧さで一番バランスのいい黄チャートを自分は勧める。
別に、黄チャートから始めても、最終的に目標の大学に入ることができればいいので、焦る必要はない。大事なことは、この本を擦り切れるまでやりこむこと。

なお、1+Aと合本になっているものと、1とAのようにバラバラのものがあるが、分厚いと持ち運びも困難だし、後で紹介する復習を行う際も、パラパラ読み返すのが困難なため、1とAはそれぞれ別に買うことを推奨する。
筋トレがしたいというのなら、止めはしないが、分厚い本はゴールが長いので、息切れしがちになる。

以下は黄チャートを前提にして話を進める。

黄チャートの勉強法

具体的な黄チャートの使い方に入る。
進研模試のレベルでも偏差値そこそこ出せるなら、基本例題は普通に解けるはず。
でも、あれを丸々全部やるのは骨が折れるので、それぞれに合った使い方をするのが望ましい。

・CHECK&CHECK
基本例題をやってみて解けない場合、自分の力が不安な場合、苦手意識のある単元の場合、などはここを基本事項を見ながら解いてみよう。
そうではない場合、ここは飛ばしてしまっても構わない。ただし、次の基本例題が全く手に付かない場合はまずはここまで戻ること。

・基本例題
ここがこの本のメインなので、ここはしっかりやり込もう。まずは基本例題を全て見ただけで解けるようにすることが大事だ。
そのために、他の色々なページがついていると言っても過言ではない。
これに全く歯が立たないようであれば、基本事項を見たり、CHECK&CHECKを解いてみて確認しよう。
なお、逆に簡単過ぎて見た瞬間解き方がパッと浮かんで、なおかつそれで合っているならやる必要はない。

・重要例題、補充例題
基本例題より、少し難易度の高い問題が収録されており、少し頭をひねったり、冷静に状況を整理する必要がある。
だが、基本例題の応用で解ける問題や、是非知っていて欲しい問題が多いので、初見で分からずとも解説をよく読んで身に付けてほしい。

・PRACTICE
例題の下についている問題で、分からなかった問題や、習得に不安のある問題の類題を解きたい場合に活用してほしい。
あとは計算問題で、計算量を確保するのにも役立つ。そういうときはここも解こう。

・EXERCISES
A問題は例題の類題が載っていることが多い。B問題は発展問題で、黄チャートをやっている人のレベルには少し高いのではないか、と思われる問題も散見する。
ここまでしっかりやっていたら時間が足らなくなるので、ここは無理にやる必要はない。
というか、ここは復習しにくいので、あまりやらなくてもいい。黄チャートだけで受験勉強を全て終わらせたい人は、やってもいい。


黄チャートで一番大事なのは、基本例題を身体に叩きこむことなので、そこを念頭に置こう。
難しい問題は、あとで一対一など他の問題集でもできるので、その時に習得すればいい。

時には諦めが肝心

チャート式の目的は、問題の型をインプットすることであり、問題を解ききる力を養成することではない。
なので、解けなかったら答えを見ても構わない。というより、5分悩んで解けなかったら、答えを見てしまった方が効率がいい。
まだ、粘って解ききる、という段階ではない。問題はそれより、答えを見たあと、どうやってそれを解けるようにするか、の方。
くだらないプライドは、今は邪魔。現状できないものはできないので、ここは素直に引き下がること。
このレベルの問題が解けないのは、入試ではどうしようもない。
その悔しさは、あとで赤本を解くときに全力でぶつければいい。


理系の問題集を効率良く使う方法は、後ほど別記事にて紹介するので、今は黄チャートというのものはそんなに粘って解くものではない、ということを肝に銘じて取り組もう。
解説を読みながら自分の手で計算を追って、全ての行について説明できるようにすることのほうがこの本においては大切だし、これはそういう問題集。

チャート式の回し方

1.まずは解く
分からなければ、基本事項を見ながらでも構わない。まずはがむしゃらに解いてみよう。5分考えこんで全く手がつかないなら、答えを見て構わない。手がつかない問題は、決定的に何かが足りてないから、何が足りないのか反省しよう。

2.解答解説を読む
「読む」という作業には、計算を自分の手で追うということも含まれる。できなかった問題は、解答解説を追う。追ってみて、納得のいかないところがあれば考える。
解決したら、どこが納得できなかったのか、どうすれば納得がいくのか、ということを絶対に書いておくこと。これは参考書には書いてないことで、自分しか分からない部分だからだ。
アプローチノートの作成などもここで。この段階で、分かった「つもり」にはなっておこう。

3.数学の勉強を終える前に、見直す
ここでは実際に手を動かすことはしない。できなかった問題をアプローチノートやヒントのメモなどを見ながら、自分で解答手順をもう一度復唱する。
できそうであれば、ヒントを見ずに解答手順を復唱する。何も見ずに解答が頭の中でしっかり再現できたら、その問題についてはできたことにする。
できなければ、書いたことが足りないか、理解が不足しているので、もう一度考えなおしたり、どこが分からないか検証して、またゴールまで辿り着いてみる。
何も見ずにできるようになるまで繰り返す。以下、復習とはこのことを言う。

4.その日の終わりにもう一度見直す
ここでも3.と同様のことを寝る前や、その日の勉強の終わりに行う。数学だけでなく、物理や化学でも同じようなことをやるといい。

5.週末に復習する
その週にどうしても苦手だった問題を中心に、もう一度3.と同様のことを行う。不安であれば、もう一度実際に書いてもいい。
ただし、書く問題はその日の勉強を圧迫しない程度にすること。

6.単元が終わったら、復習する
一度単元全ての問題が終わったら、初見でできなかった問題を中心に手を動かさずに解答作成のシミュレートを行う。
できない問題は、答えを見ながらでいいので、できるようになるまで復唱する。

7.2周目を、1と同様に行う。
1.から6.までの手順を最初からやり直す。おそらく一周目よりもかなり早い時間で終わると思うので、もうどの例題を見ても、見た瞬間に手が止まることなく解答できるようになるまで、繰り返す。
何周も回しても進歩しないのは、こういった徹底した復習ができていないからである。人間は、とても忘れやすい生き物なのだ、ということを覚えておこう。

チャート式をやる時期

黄チャートのレベルと、見込める偏差値を考えると、2年までの範囲は2年生のうちに終わらせておきたい。
難関大学を狙うなら、これだけでインプットは足らず、1対1をやりこむ時間が欲しい。
さらに黄チャートの例題が解けないとなると、センターの数学もかなり怪しいはずで、その状態で3年になるのは少々危険に思える。
もちろん、中堅大を狙う人や、センターでしか使わない人なら3年から始めてもいい。
理系で、少し難しいところを狙いたいなら、2年の冬休みまでには終わらせて、2年の3学期からは1対1をやるか、3Cを進めるのが理想的なプランとなる。