難関大突破 究める物理I・II

本来なら、同じ著者の面白いほどシリーズのような入門書や、明快解法講座のような定番書から紹介すべきなのだが、本屋で難関大向けの良書を見つけたので、紹介する。
出版社は面白いほどシリーズの中経出版。ここの出版社は最近かゆいところに手が届く本をよく出している気がする。
自分が受験するころはまだ萌え表紙のうさんくさい本ばかり出している出版社だったのだが、ここ数年で方針が変わったのかもしれない。

難関大突破 究める物理?・?

難関大突破 究める物理?・?

これがその本だ。表紙にかわいい女の子は、残念ながら描かれていない。
難関大でよくある微積分を明らかに意識した問題や、受験生が混乱しがちな近似の問題、その他受験生が試験場で見たら「うわぁ」と頭を悩ませてしまう、難関大で「頻出」のテーマを扱っている。
問題によっては、大学1、2年の力学や電磁気、熱力学に踏み込んだ内容のものもある。(下手な大学の理学部物理学科の定期試験より、こっちの問題のほうが難しい)
高校の教育課程などお構いなしに、微積と近似を使って「物理的にこの式は、どんな現象を意味しているのか」を問うのが、難関大学の物理の出し方である。
このあたりの問題は通常、予備校の授業の最上位クラスで扱うが、なかなか市販の参考書でこの手の難問を独学でも理解できるように解説された問題集は見つからない。
難関大学受験生に人気の問題集といえば、難系新・物理入門問題演習あたりが定番なのだが、解説が丁寧か、と言われたらそうでもない。
わかってる人には丁度いいし、誰か教えてくれる人がいるなら大丈夫、な程度の解説なように思われる。
独学で物理をやる人、予備校の授業で先生と肌が合わない人で、難関大学を受ける人はこれを一度読んでみると、難関大学が求めている物理の考え方がわかる。
難関大学が求めている物理は、公式を暗記して、適用するという単純なことではないということがきっと分かると思う。

もちろん、この本をやる前に、標準的な問題集はひと通り解けるようにしておくべきだ。
重要問題集や、名門の森物理I・II応用実戦講座といったところがこのレベルの定番か。
このあたりの問題集をひと通りやってからではないと、この本のありがたみは分からないだろう。

ちょうどこのレベルの問題集を終えて、さあ赤本を解いてみて、自分の非力さに愕然となる季節だ。
難関大学の過去問と、標準問題にはこの本に載っているような差が存在する。
一つ上のレベルを、この本で乗り越えよう。