浪人の心得

二年間の浪人生活を振り返って、浪人生活をうまくいかせるコツを書いていく。
(失敗談を踏まえながら)
浪人してる人はぜひ参考にしてほしい。

浪人に一番必要なものは

学力もそうだが、一番大事なのは精神だ。第一志望に落ち、来年こそは絶対受かると誓って望む一年であるが、慢心や怠慢、不安といった様々な負の要素が心を圧し潰し、時間も、合格の可能性も圧し潰していく。
一年という時間は、過ごしているうちはとても長い。
大学生になれていない、大学生になりたい、大学生になるはずだった、という気持ちが、やがて「果たして次は受かるのか?」というプレッシャーにつながる。
「浪人したから、次はない」という気持ちは、「だからこそ絶対受かるんだ」という強い意思になることもあるが、反対に「次落ちたらどうしよう」というまさに「死にたくなる」ような不安にもなる。
一度負の方向に回りだした精神は、勉強の集中力を乱し、生活リズムを乱し、やがて学力を上げるどころか下げてしまうことさえある。
最初から最後まで、健康な心で、ペースを乱さずに走りぬくことさえできれば、結果は自ずとついてくるものである。
つまり、浪人生はいかに自分の「受かる」という気持ちを勉強に繋げ、それを保つか、との戦いなのである。
無闇な根性論は好まないが、結局「根性」が最後の結果を左右する。
それが、浪人という生き方なのだ。

それともう一つ大事なことは、「早寝早起き」だ。夜中まで起きて勉強なんてとんでもない。どうせ寝てしまうんだから、夜中に勉強などしても無駄だ。
結局、朝はやくすっきり起きて、夜は次の日に備えて余計なことをせずに寝てしまうのが一番効率のいい過ごし方なのである。
良い生活習慣を、いかに保つかに苦心することも、浪人生の大事な心構えだ。

予備校に通うべきか

一年目宅浪、二年目予備校とどちらも経験して、結論としては行けるなら行ったほうがいい。
事情が許すのなら、絶対に通っておいて損はない。
その理由は以下に示すので、読んでほしい。

宅浪として生きること

予備校の方がいいとは書いたけど、もちろん宅浪にだって利点はある。

一番の利点は、親御さんのお財布に優しいことだ。
参考書なんてせいぜい買っても年間100冊。1冊平均1500円として、参考書代は15万円程度。
一方、予備校の年間費用は通年授業で68万程度、季節講習含めると、90万はかかることが多い。
単純に、1/6程度の予算で浪人ができるということになる。
さらに、毎日通う交通費なども考慮に入れると、圧倒的に安くつく。
Z会などの通信講座を利用しても、それでもやはり金銭面では圧倒的に宅浪が有利だ。

次に、自分のペースで自分に合わせた勉強ができるということだ。
どうしても、予備校のコースに入ると予備校のペースに合わせないといけない。
絶対に自分のペースで勉強したい、という人も宅浪はいいかもしれない。

このような利点はあるものの、それを覆すだけの弱点が宅浪には大きくある。
まず、生活と勉強のリズムだ。どうしても、人間はやらなければいけないものは、やらされないとできないもので、勉強も塾という器がないと怠けてしまうものである。
自由というものは大変恐ろしいものであり、次の日に何もないと夜遅くまで無為に過ごし、次の日遅くに起きていまいち勉強のやる気がない、ということはよくあることだ。
これが続くと、一日何もしないただのNEETのような生活になる。そう、浪人生は勉強をしなければ、ただのNEETなのである。
自分も宅浪の最初の三ヶ月、ほとんど勉強しないで現役のときの学力を一気に落とした。朝、起きなければいけない事情がないと、人間は起きないものだ。鋼の精神力をもっている人であれば、別に問題ないのだが、大抵の人間の精神力は豆腐のように脆いので、宅浪をするとそれが如実に表れると思う。

それより何より、宅浪最大の敵は、「孤独」だ。何日も、何ヶ月も、誰ともコミュニケーションをとらないと、本当に精神が蝕まれる。浪人最大の敵である、精神的不健康を孤独は加速させる。誰とも話さないから、自分の悩みや不安は自分の中でしまい込み、自問自答を繰り返す。
しまいには、不眠や、逃避、鬱にまで発展することもある。おそらく、第一志望への気持ちが強ければ強いほど、こういった精神的な落ち込みはより大きくなる。さらに、勉強そのものも、孤独だと効率が悪い。分からないところがあったときに、考えるのは大事ではあるが、考えすぎてペースを乱すのは時間が限られた受験という領域においては非常にマイナスである。

これらを考慮すると、やはり宅浪という選択肢は、可能な限り除外した方が有利に働くと思える。

予備校に通うということ

予備校は、とにかくお金がかかる。私立の文系大学一年分の学費はかかるだろう。大学生でもないのに、大学生並にお金がかかる、しかも奨学金はほぼないといっていいだろう。
そこまでして、本当に行く価値はあるかのか、というと、それはイエスだ。
予備校は、正しく利用できれば、確実に値段相応の効果を発揮してくれる。あまり正しく利用できたとは言えない自分ですら、今になって予備校に通ってよかったと思っている。
予備校の利点はいくつもあるが、先述のような宅浪の欠点はおおよそ回避できる。
朝からのクラスなら周りは全員浪人生で、しかも似たような目標を持つ人が周りに沢山いる。
全員ライバルであり、全員仲間という環境は予備校でなければなかなか作れないだろう。
さらに、講師陣はテキスト以外の参考書の質問や、参考書の使い方、受験の悩みなどなど、意外となんでも聞いてくれて、参考になることが多い。
どうせ高いお金を払うのだから、使えるものは全て使ってしまった方がいい。

予備校の詳しい使い方は、次回に詳しく説明しよう。



余談であるが、予備校代を捻出するためにアルバイトをするというのは、本末転倒な事態になるので、やめておいたほうがいい。素直に、親なり、親戚なりに土下座して脛をかじらせていただいたほうが、身のためである。
というのも、未成年の高卒ができるバイトというのは、肉体的に楽なものが少なく、アルバイトとはいえそれなりに気も使う。
朝から予備校に通い、終わったらバイトというサイクルは予備校のカリキュラムをきちんと消化できなくなる。
予備校生も使える奨学金として新聞奨学金というものがあるが、あれをやるくらいなら、就職してお金貯めて再受験した方がマシだ。
奴隷のように働かされて、まともに勉強する時間もない上に、住環境も4.5畳の風呂なしトイレ共同の部屋に突っ込まれるという、ひどいものである。
朝の2時半に起床、7時半まで仕事、予備校の1限は間に合わず、15時半に帰り、20時までまた仕事で、ご飯食べてすぐ寝る、というような信じられない生活になるのが関の山だ。
ブラック企業を大学入学前に経験したい、というのであれば話は別だが。
「そんな、親に申し訳ない」と言うなら、その分勉強時間に回すべきだ。親御さんはあなたにバイトさせるために浪人させたわけではなく、希望の大学に入って欲しいから浪人させたのだ。申し訳なく思うのなら、その分勉強時間に回して結果を残すことが最大の親孝行であることを、忘れないでほしい。

こんなことは少し考えてみれば、ごく当たり前の話なのだが、追い詰められると変な発想をすることがあるので、そういう悲劇がこれ以上繰り返されないようにここに記す。
ちなみに自分の場合、新聞奨学生は自殺未遂までいったので、一ヶ月弱で逃亡した。
大学に入れなくて自殺するのではなく、予備校に満足に通えないから自殺しようとするなんて、最高に愚かな話だ。