理系科目は暗記か

よく議論される、理系科目(特に、物理と数学)は暗記か、否かということについての見解を説明しながら、理系科目全般における勉強法について議論する。
理系科目には理系科目特有の勉強の仕方があり、それさえ身に着けてしまえば、「数学なんてできるわけがない」ということは幾分か解消されるのではないかと思う。主に文系の人というのは、おそらく文系科目の暗記の仕方と同じように暗記しようとするから、なかなか理系科目ができるようにならないのだと思う。

ただ、一つ断っておくと、自分は数学は苦手科目だ。物理学科に進んだ今でも、数学は苦手のまま変わらない。なので、数学はすごく得意だ、あるいは数学は大好きでたまらない、という人にはもしかしたら参考にならないかもしれない。「あんまり数学は得意じゃないけど、できるようになりたい」、「数学に時間を割いてもできるようにならない」という人は、この記事を読んで自分の勉強法を見直して欲しい。

理系科目は暗記である

結論から言うと、暗記科目だ。少なくとも、ある程度のレベルまでは。ただし、一般的に言われている「暗記」とは、覚える過程がまるで異なるのだ。だから、理系科目は暗記科目ではない、という主張が存在するのだ。
簡単な例を挙げると、このブログを見ている人のほとんどは正負の四則演算はできるはずだ。(-1)+5=4であるし、6×(-4)=-24であることは、無意識にわかるはずだ。
では、何故この問題が解けるか、というと、計算の法則を理解し、覚えているからである。そう、覚えるとは、つまり暗記である。これが高度になり、微積分の計算になったり、ベクトルの計算になったりしているだけで、結局やり方を理解し、暗記するということは、変わらないし、これをしなければいつまでも数学の問題は解けないままなのだ。
では、何故暗記科目ではない、と主張する人も一定数いるのか、文系科目における「暗記」と、何が違うのだろうか。

理系科目における「暗記」

理系科目と文系科目の暗記の差は、一言で表すと、「過程の暗記」か、「事柄の暗記」か、にある。

これを料理にたとえてみよう。
例えば、あなたはカレーを作るとする。カレーに必要な材料と分量はどのくらいだろうか。
肉200g、たまねぎ2個、にんじん1本、じゃがいも3個、カレールー1箱、といったところだろうか。この材料がどれか、というのはまさに文系科目の「事柄の暗記」である。
材料を間違えたら、料理は出来上がらない。当然のことだ。
しかし、材料が揃ったからといって、カレーは出来上がらない。もちろん、これを正しく調理することが必要だ。
材料を切り、炒め、水を入れて煮て、カレールーを入れて、煮込む。この順序を一つでも間違えたら、とてもマズいカレーが出来上がってしまう。
(ちなみに、材料が煮えないうちにカレールーを入れると、生煮えのカレーが出来上がる。マズいどころか、お腹を壊すこともある)
これは数学や物理の問題で言うなら、間違った解答だ。つまり、調理の過程の暗記こそ、理系科目の「過程の暗記」なのだ。
この暗記は、別に一言一句覚える必要はない。大事なのは、各課程で正しい調理を行い、正しい順番で調理を行うことだ。
理系科目の暗記と文系の暗記の差をなんとなく掴めただろうか。

料理も、経験がものをいうように、数学も経験がものをいう。
解いたことのある問題の記憶から、今目の前にある問題の解法が思いつく。だから、沢山の問題の解き方を知って、それを覚えて使えるようにしなくてはいけない。
そういう意味で理系科目は暗記科目なのだ。いかに問題を料理するレシピを身体に覚え込ませるかにかかっている。
もちろん、そういう意味で才能も大きく左右する。一つの解法を知れば、十の解法に応用できる人、全く新しい発想で問題にアプローチできる人、そういう人は何も言わなくても数学ができるようになるし、また難関大など苦にせず受かってしまう。
それはそれで素晴らしいし、そういう天才が新しい科学を作っていくと思うのだが、大抵の人並みの頭脳を持つ人間はそうではない。一を知って、一歩ずつ進む。

理系科目の「暗記」が、英単語や社会の用語の暗記と違うんだ、ということを意識して勉強すれば、もしかしたら数学もそれほど苦手ではなくなるかもしれない。